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report-2023

【Mt.FUJIMAKI 2023】ライヴレポート

今年もまた、約束の日に約束の場所へやってきた。

2023年10月7日、山梨県南都留郡山中湖村。雲は多いが空の半分は青で、風は強いが日差しが時にまぶしい。澄んだ湖面と富士山の稜線もくっきりと見えている。あなたがいる場所がまほろば。そんな歌詞をふと思い出す、この日を待ちわびた多くの観客と雄大な風景のもと、「Mt.FUJIMAKI 2023」がいよいよ始まる。

「今日、明日と、贅沢で、素晴らしい音楽を届けたいなと思います。楽しむ準備はよろしいでしょうか」

山中湖中学校のジャズバンド、BLUE LAKE BEATの溌剌とした演奏。村長・高村正一郎の挨拶。恒例のオープニングセレモニーのあと、藤巻亮太がアコースティックギター1本で「Summer Swing」と「深呼吸」を歌う。「深呼吸」はとても懐かしい曲だが、歌っていることは今とほぼ変わらない。たまに両手広げてみよう。もう少し力抜いて。今この場所にとてもふさわしい、あたたかく心に響く1曲。

 今日の素晴らしい青空のような、爽やかな音楽を届けてくれると思います――。藤巻に紹介された今日のファーストアクトは、The Songbardsだ。ギター&ボーカルの上野皓平と松原有志、ドラムの岩田栄秀の3人が歌える強みを生かした、溌剌としたインディーポップ風バンドサウンドとコーラスワーク。全員が20代だが、80’sや90'sのUKロックを思わせる、どこかノスタルジックなメロディがとても心地いい。

「何が起きても今日は最高に楽しいと思うので。一緒に楽しみましょう」

藤巻プロデュースの「フィラメント」は、洋楽ルーツの演奏に日本的な情緒を感じるせつないメロディを乗せた佳曲で、藤巻楽曲の世界観とも近い。ほとばしるエナジーをキープしたまま、「夏の重力」から「Inner Lights」まで全8曲、キャッチーなギターリフ、サイケデリックなグルーヴ、ポップにハジけるリズム等、「これが好き」という情熱がストレートに伝わるパフォーマンスに、あたたかい手拍子が送られる。サポートベースの桂悛輔を含め、まさに青空のように爽やかな歌と演奏で、初見の観客もしっかりと楽しませてくれた。

 SEと共にステージに登場した瞬間、辺りの空気をぎゅっと引き締める鋭い緊張感をもたらしたのはTHE BACK HORNだ。ボーカル山田将司、ギター菅波栄純、ベース岡峰光舟、ドラム松田晋二。全員が黒づくめでビシッと決めて、1曲目「声」から「罠」へ、ぐんぐんと激しさと重さを増しながら、容赦なく遠慮なくTHE BACK HORNらしさを叩きつける。どんなフェスでも変わらない、観客の視線をステージに釘付けにする、荒々しくもスマートなパフォーマンス。

「THE BACK HORNは今年で結成25周年を迎えることができました。出会ったすべての人のために作った新曲を、初めて演奏したいと思います」

 3日前にリリースされたばかりの新曲「最後に残るもの」のライブ初披露を体験した、今日の観客は幸運だ。出会えて良かった、心からそう思うよーー。飾らない感謝の言葉が、力強く前進するビートに乗ってまっすぐに届く。THE BACK HORNの歌はどんなに激しくても、とても優しい。「シンフォニア」では、「帰る場所ならMt.FUJIMAKIにあるから」と、歌詞を変えて歌ってくれた。ラスト曲「JOY」では、観客全員のコーラスと手拍子が巻き起こった。25年の貫禄と、未だ色あせない新鮮さを併せ持つ、圧巻のライブだった。

 午後になって風が弱まり、陽の差し込む量が増えてきた。そのちょうどいい時間帯に登場したOAUは、自他ともに認める野外フェスの盛り上げ役ナンバーワンだ。BRAHMANを母体に、パーカッションとバイオリンを加えたアコースティックなバンドサウンドは、ケルト音楽やカントリー音楽のルーツを感じさせる軽快なリズムとメロディで、思わず知らず体が動く。英語のMARTINと日本語のTOSHI-LOW、二人のボーカルの個性の違いも実に楽しい。

「素晴らしいものは素晴らしいと感じる視線を、ずっと持ち続けていたいと思います。今日も、そんな機会を持たせてくれてありがとうございます」

 OAUは富士山の向こう側、御殿場で開催されるフェス「ACO CHiLL CAMP」のレギュラーバンドの一つ。山梨側と静岡側と、どっちから見る富士山も素晴らしいと言いながら、「山に表も裏もない。決めたのは人間。思い込みや見え方をフラットにして、素晴らしいものは素晴らしいと言いたい」と語る言葉が沁みる。とことん盛り上げ、ジョークで笑わせ、心に残る言葉をつぶやき、ラスト曲「帰り道」でしっとりスローに締めくくる。OAUのライブの素晴らしさはいつも言葉を超えてしまう。現場で体感するのが最上だ。

THE BACK HORN、OAU、そしてACIDMAN。さっきTOSHI-LOWが「テレビの人気者と共演できると思ったのに、いつもと同じメンバーじゃねぇか」とジョークを飛ばしていたが、確かにこの並びはロックフェスの定番だが、「Mt.FUJIMAKI」の観客にとってはむしろ新鮮なはず。湖の向こうに傾く西日を背に受けて登場した大木伸夫、佐藤雅俊、浦山一悟の3人は、スローで繊細な「リピート」で観客の心をそっとつかみ、「FREE STAR」で勢いを付けてぐっと加速する。

「富士山、ちょっと見えて来たね。すごく素敵な場所です。山梨、大好きです」

 藤巻も大好きだという美しいメロディの「赤橙」、スリーピースの限界を超える爆音でぶっ飛ばす「夜のために」と、緩急織り交ぜたセットリストで観客を巻き込むスタイルは、さすが歴戦のライブ巧者。自ら「ミュージシャンきっての宇宙馬鹿」を自称する大木のMCも実に印象的で、圧倒的スケールの宇宙の中で、ちっぽけな僕らは何を頼りに生きていけばいいのか?を語り、暮れなずむ空のもと、壮大なロックバラード「ALMA」(スペイン語で魂、愛、心)に託して真摯にメッセージする。音楽と思想が結びついたバンドとして、ACIDMANの世界観は真に唯一無二だ。

「Mt.FUJIMAKI 2023、最後までありがとう。楽しんでいってください」

 陽が落ちて暗くなる代わりに照明が美しく映える午後5時半、満を持して登場した藤巻亮太と藤巻バンドは、1曲目「裸のOh Summer」から「フェスタ」へ、寒さを吹っ飛ばすパワフルな演奏と歌で観客を総立ちにさせる。頼れるバンドメンバー、桑原あい(Pf)、御供信弘(B)、片山タカズミ(Dr)、曽我淳一(Key)、真壁陽平(G)の演奏は分厚く力強く、広い芝生エリアの最後方までしっかりと届いている。

「2018年から始まって、毎年いろんな感動がありました。去年は3年振りにここで開催できて、今年はまた素晴らしいロケーションの中で、天気もいい感じで、みんなのおかげです」

 今日感じたものが、ずっと消えずに残る何かになったら嬉しいです――。かつて、そんな思いを込めて作ったという「流星」は、ライブで聴けること自体が嬉しいレアな1曲。今日のセットリストの2曲目から8曲目まではすべてレミオロメンの曲だ。ジャズピアニスト・桑原あいの歌心あふれる伴奏を得て、なおさらに情感豊かに響く「もっと遠くへ」。アップテンポでぐんぐん飛ばす「明日に架かる橋」「雨上がり」。観客も寒さを忘れて立ち上がり、手を振り上げる。子供も一緒に踊っている家族連れもいる。そしてピアノの一音、ギターの一音にまで心のこもった「粉雪」の、心に沁み入る演奏と歌。これまで何百回聴いた「粉雪」よりも、今日聴いた「粉雪」が一番いいと思える。名曲とはそういうものだろう。

 最後の曲を歌う前に、嬉しい発表があった。「3月9日」が世に出て20周年の2024年3月9日、日比谷野外音楽堂でのワンマンライブ決定。「3月9日」は、20年間で多くの人を祝福し、これからも祝福し続けるだろう、本当に幸せな歌だ。懐かしい歌が新しい息吹を持ち、生き生きと歌われる。リズムに合わせ、客席で大きく手が打ち振られる。スマートフォンのライトがあちこちで揺れる。最後のリフレインのコーラスで、ステージの上と下が一つになる。

 アンコールは、今年できたばかりの新曲「朝焼けの向こう」の、元気いっぱいに疾走するリズムに乗って。藤巻によると、この日の選曲テーマは〈Mount Set〉で、威風堂々とした富士を意識したシンボリックな曲を選んだとのこと。春の「Sunshine」ツアーを4ピースバンドで回ったことで、今の藤巻亮太はシンプルなロックバンド志向へと回帰しているようだ。すべてバンドだった今日の出演者の中でも、藤巻バンドの素晴らしさは際立っていた。最後に全バンドを呼び込んで記念撮影をする藤巻の、安堵と充実で輝く表情がそれを物語る。今日はいい日だった。明日はきっと、もっといい日になるだろう。

 2023年10月8日、「Mt.FUJIMAKI 2023」の2日目は、バンド、ユニット、ソロが入り乱れ、音楽性も多種多様な、実にバラエティに富んだ日だ。昨日よりも観客の出足が早く、広い芝生エリアがあっという間に人で埋まる。観客層も様々で、一人で来ている人、家族連れ、女性グループ、男子学生のグループも目につく。なんたって、今年の「Mt.FUJIMAKI 2023」は、高校生以下入場無料だ。若い世代に素晴らしい音楽に触れてほしいという、藤巻亮太の思いがそれを実現させた。盛り上がる準備はすでに整っている。

「地元・山梨が育んだバンドです!」

 午前10時25分。この日のオープニングアクトを決めるオーディション、FM FUJI presents「Road to Mt.FUJIMAKI 2023 Opening Act LIVE」を勝ち抜いた4ピースバンド、STAY ON SOLIDを紹介する藤巻の言葉から、地元のシーンを盛り上げたいという強い熱意が伝わって来る。

STAY ON SOLIDはその名の通りソリッドなバンドサウンドに乗せ、青春期の迷いや希望をまっすぐに綴る、ボーカル&ギター・丸山啓太の迫力ある歌声が魅力のバンド。メロディックなスピードチューンから切ないバラードまで、3曲のみの演奏だがステージでの振る舞いは堂々たるもの。外連味のない演奏で、オープニングアクトの大役をしっかりと果たしてくれた。

 藤巻が名前をコールした瞬間から大盛り上がり。ステージ前に陣取る熱狂的ファンの歓迎を受け、「たくさん声出して盛り上がって行きましょう!」と満面の笑顔で登場したのは、ももいろクローバーZの高城れにだ。鮮やかなブルーのロングドレスをひるがえしながら、ソロの代表曲「SKY HIGH」や、ももクロのナンバー「笑-笑 〜シャオイーシャオ!〜」「吼えろ」など、踊って騒げる楽曲を連続投下。拳を振り上げ、タオルを掲げ、たった一人で大観衆をぐいぐい盛り上げて、ハッピーなヴァイブスが会場いっぱいに広がってゆく。

「まさかまさかの、同じステージに立てるとは夢にも思いませんでした。ここからのコーナーが一番緊張します」

 後半からは藤巻BANDを呼び込み、「3月9日」を藤巻とデュエット。自身のソロコンサートでも必ず歌うという強い思い入れが、何度も聴いてきた「3月9日」に新たな感動を付け加える。明るく伸びやかな中に芯の強さを秘めた歌声は、きっと彼女そのものだろう。最後にもう1曲、「everydayれにちゃん」でバンドと共に思い切りハジけて、藤巻に「来年も呼んでください!」と笑顔でひとこと。誰にも愛されるエンタテイナーとしての魅力を存分に発揮した、100点満点のパフォーマンスだ。

 静かに降り始めた雨の中に、澄んだピアノとアコースティックギターの音色、しっとりと落ち着いた歌声が美しく映える。「海辺の手紙」から始まった川嶋あいのステージは、寒さを感じる気候の中でそこだけがあたたかく、包み込まれる優しさを感じるものになった。飾らずにまっすぐに、言葉に込めた思いをひとことずつ伝える歌声。大切な人を励ます「大丈夫だよ」、心のこもった卒業ソング「旅立ちの日に…」など、1曲ごとの物語が鮮やかに目の前に浮かんでくるようだ。

「こうやってみなさんと直接会って歌を届ける日が来るとは、少し前までは想像もできなかったことですけど、待ってて良かったですね。やっぱり春は来るんだなと思います」

 ラスト2曲は、藤巻亮太とバンドを迎えてのコラボレーション。20年前の人気番組「あいのり」の話題で盛り上がり、番組のテーマ曲として大ヒットした「明日への扉」へ繋げる展開は、当時を知る世代には照れくさいほどに懐かしい。そして藤巻が作曲、川嶋が作詞して歌った「どうにか今日まで生きてきた」の力強く前進するリズムと、未来への希望を詰め込んだ歌詞が、会場いっぱいの手拍子を呼ぶ。トークの面白さも、歌の説得力も、すべてにおいて川嶋あいらしさをしっかりと見せてくれた充実の時間。

 寒さを吹き飛ばしましょうかーー。LOVE PSYCHEDELICOが登場し、NAOKIがギターをジャランと鳴らし、KUMIが「Your Song」を歌い出した瞬間、空気ががらっと変わった。豊かな人間味あふれる本気のギターと本物の歌。「Hit the road」からはヴァイオリンの美央も加わり、ギターとヴァイオリンでこれだけ豊かなグルーヴが出せるのか?と驚くほど、生き生きとした音が空気を震わす。「裸の王様」「Last Smile」では、NAOKIのエレクトリックギターが胸を衝く哀愁のメロディをとめどなく紡ぎ出し、KUMIの凛とした歌声が心の琴線を激しくはじく。目と耳と心がステージに釘付けになる。

「富士山も姿を見せてほしいね。でもたぶん聴いてくれてるね」

 再びアップテンポへ転じ、「Shadow behind」から23年前のデビューヒット「Lady Madonna~憂鬱なるスパイダー~」へ、観客の盛り上がりを味方にして一気に突っ走る。NAOKIの弾くリゾネーターギターの、豊かな共鳴音がとんでもなくかっこいい。MCをほぼしない代わりにたっぷりと曲を届け、耳なじみの曲をたくさん歌ってくれた二人。洋楽と邦楽の垣根をひらりと跳び越え、美しい日本語とリズミックな英語で聴かせるLOVE PSYCHEDELICOのロックは、今もなおフレッシュで独創的だ。

 細かい雨が降り続く中、シンプルなギターリフ中心の踊れるロックンロールで、会場内の熱をぐっと上げてくれたのはTRICERATOPSだ。和田唱のギター、林幸治のベース、吉田佳史のドラムが足並み揃え、大きなうねりを生み出す「Raspberry」「PARTY」でつかみはOK。誰もが踊れる強靭なグルーヴと、誰もが惹かれるフロントマン・和田の天性の明るさがもたらす開放感。藤巻も学生時代にコピーしていた憧れのロックバンドは、ばりばりの現在進行形だ。

「個人的に、Mt.FUJIMAKIに出るの、2回目なんですよ。知ってました?」

 記念すべき「Mt.FUJIMAKI」の第一回の、しかも一番手が自身のソロステージだったことを自慢げに語る和田。そういえばあの時も1曲目は「Raspberry」だった。「Mt.FUJIMAKI」の歴史の積み重ねを感じる、ちょっといいエピソード。「MIRROR」では60年代風のサイケデリックなブルース風味たっぷりの素晴らしい演奏を聴かせ、「トランスフォーマー」では観客にアカペラのコーラスを任せて全員の心を一つにする。たとえ曲を知らなくても問題ない。誰もが音の渦に巻き込まれて踊ってしまう、TRACERATOPSはそういうバンドだ。

 凄腕揃いの藤巻BANDをバックにPUFFYが歌う、これが盛り上がらないわけがない。「これが私の生きる道」から始まったPUFFYのステージは、「サーキットの娘」「海へと」「渚にまつわるエトセトラ」と、誰もが知っている曲しか出て来ない大ヒットパレードで、わかりやすいリズムとメロディは小さい子たちにも大人気。世代を選ばない、会場内の隅から隅までのはしゃぎぶりは、この2日間でも1,2を争う盛り上がりだ。

「私の心には富士山が見えています。優しい気持ちの子には見えるんです」

 雨も寒さ視界の悪さも関係ない、ここは優しい子たちしかいないハッピーなパーティー会場。後半も勢いを落とさず、完全洋楽仕様の英語詞ナンバー「Radio Tokyo」をじっくり聴かせたあとは、「愛のしるし」「アジアの純真」と再び大ヒット曲連発で締めくくる。たぶん当時はいちリスナーとして聴いていた、PUFFYの曲を演奏するのが嬉しくて仕方ないのだろう、藤巻BANDの気合いの入り方も半端ない。見た目も声もあの頃と同じ、大貫亜美と吉村由美の溌剌としたパフォーマンスは、すべての人を笑顔にする。

「最後まで残ってくれてありがとう。盛り上がっていくよ!」

 いよいよここまで来た。2日間続いた「Mt.FUJIMAKI」のラストステージ、藤巻亮太のライブは「南風」から始まった。続いて軽快なカントリータッチの「まほろば」、季節を超えて柔らかく優しい気持ちを運んでくる「Sakura」へ。藤巻によると、初日のメニューは威風堂々たるシンボリックな曲を揃えた〈Mount Set〉で、2日目の今日は爽やかさとポップさ、季節の移ろいを感じさせる〈Lake Set〉。「8分前の僕ら」と「太陽の下」を並べたのは、夕景の時刻を意識したそうだが、太陽は見えずとも思いは伝わる。雨越しにきらきら輝く照明のもと、芝生エリアを埋めた観客が打ち振る無数の手が壮観だ。

「今年のMt.FUJIMAKIだからこそできること。今しかない、今の感覚を残しておきたいなと思って、新曲を作ってきました!」

 夏に吹く強い東風をさす言葉「あゆ風」をタイトルに持つ新曲は、まるでデビュー初期に戻ったようなエネルギッシュな勢いあふれるロックナンバー。やはり2023年の藤巻亮太は、力強くストレートなロックバンド志向のようだ。続けて歌われた「スタンドバイミー」と並べても、まったく違和感がない。藤巻BANDの勢いとノリの良さが、昨日よりも一段上に感じるのは、寒さを吹き飛ばすためか、これがラストステージだという気持ちの昂ぶりか。

「この素敵な場所、素敵な音楽でリフレッシュして、明日からの活力に繋げてもらえたらと思います。今日はどうもありがとうございました」

 最後にみんなを思い切り冷やして終わりたいと思います――。笑顔でおどけながらも、藤巻の歌にはいつも以上の気迫を感じる。この土地で生まれた「粉雪」をこの土地で歌うことに、やはり特別な思いがあるのだろう。それをこの場所で今聴いている、特別な思いはこちらもまったく同じだ。

「みなさんから笑顔や拍手や、たくさんの力をいただきました。この力を自分の音楽に代えて、またMt.FUJIMAKIができるように頑張っていきます。応援よろしくお願いします」

 みなさん、また会いましょう――。2日間にわたる音楽の祭典の最後を締めくくるのは、やはりこの曲、「3月9日」だ。ゆったりとうねるリズムに乗せて、思い思いに体を揺らす観客。長く続くリフレインに合わせて、あちこちで打ち振られるスマートフォンのライト。最後は昨日と同じく、残ったメンバーとアーティストで記念写真に収まり、笑顔で観客に手を振る藤巻。

天候には恵まれなかったが、それを補って余りある各アーティストの熱演と、今日ここにしかない観客の一体感は、「Mt.FUJIMAKI」のヒストリーに忘れがたい1ページを書き加えた。今年ここに来た観客は、次もまたここへ来るだろう。ここにしかない風景、人、音楽、思いを確かめながら、「Mt.FUJIMAKI」は続いていく。

Text by Hideo Miyamoto
Photo by Ryo Higuchi

Mt.FUJIMAKI 2023 セットリスト

2023年10月7日(土)

■藤巻 亮太
1.Summer Swing
2.深呼吸

■The Songbards
1.夏の重力
2.マジック
3.太陽の憂鬱
4.フィラメント
5.悪魔のささやき
6.Time or Money?
7.ガーベラ
8.Inner Lights

■THE BACK HORN
1.声
2.罠
3.最後に残るもの
4.シンフォニア
5.コバルトブルー
6.太陽の花
7.JOY

■OAU
1.夢の続きを
2.Time’s a River
3.Peach Melba-Homeward Bound
4.Again
5.Making Time
6.朝焼けの歌(Asayake no uta)
7.帰り道(Kaeri michi)

■ACIDMAN
1.最後の国
2.リピート
3.FREE STAR
4.赤橙
5.Rebirth
6.夜のために
7.ALMA

■藤巻亮太
1.裸のOh Summer
2.フェスタ
3.流星
4.もっと遠くへ
5.明日に架かる橋
6.雨上がり
7.粉雪
8.3月9日

ENCORE
1.朝焼けの向こう

2023年10月8日(日)

■STAY ON SOLID
1.センチメンタル
2.変わりゆく日々の中で
3.メモリー

■高城れに
1.SKY HIGH
2.笑一笑 〜シャオイーシャオ!〜
3.吼えろ
4.一緒に
5.じゃないほう
6.3月9日
7.everydayれにちゃん

■川嶋あい
1.海辺の手紙
2.大丈夫だよ
3.ふたつ星
4.旅立ちの日に…
5.明日への扉
6.どうにか今日まで生きてきた

■LOVE PSYCHEDELICO
1.Your Song
2.Hit the road
3.Feel My Desire
4.裸の王様
5.Last Smile
6.Shadow behind
7.Lady Madonna〜憂鬱なるスパイダー〜

■TRICERATOPS
1.Raspberry(short ver.)
2.PARTY
3.GOTHIC RING
4.MIRROR
5.FEVER
6.トランスフォーマー

■PUFFY
1.これが私の生きる道
2.サーキットの娘
3.海へと
4.渚にまつわるエトセトラ
5.Radio Tokyo
6.愛のしるし
7.アジアの純真

■藤巻亮太
1.南風
2.まほろば
3.Sakura
4.8分前の僕ら
5.太陽の下
6.あゆ風(新曲)
7.スタンドバイミー
8.粉雪

ENCORE
1.3月9日